「ぼく」が16歳のときに恋をした15歳の「きみ」は、ある時、「ここにいるわたしは、壁の中に残された『本物のわたし』の影のようなものにすぎない」という手紙を書き、そのまま姿を消す。「わたしはあなたのものです」という言葉を残して。
 壁の中、というのは彼女が話してくれた空想の世界のことだったが、45歳になった「私」は、ある日「穴」に落ち、その壁の中の世界にたどり着く。そこで私は、図書館の中に保管された「古い夢」を読む仕事を与えられ、その図書館では、16歳の姿のままの彼女が、(まったくもとの世界の記憶を持たずに)働いている。
 あらすじを書いていると本当にバカみたいなのに、読んでいる時間は何物にも代え難い、唯一無二の作家。
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