9月 今月のことば

信じざるを得ない言葉に遇って
信ずる心が生まれるんでしょう。

           伊藤元


 話題の映画『国宝』を見ました。8月後半時点で興行収入115億円を超え、実写邦画で歴代2位の売り上げに位置しているそう。歌舞伎を題材にした超大作で、普段、歌舞伎鑑賞に縁のない私でも、その臨場感抜群の舞台シーンにはどっぷりと引き込まれました。
 その熱が冷めないうちに、『国宝』についてネットで検索してみたところ、市川團十郎さんがこの映画について語っている動画があったので見てみました。「よくできた映画で胸に刺さるものがあった」と語る中で、主人公が子役時代、師匠に竹刀で殴られながら、厳しく指導されているシーンについて「実際にはあれ以上で、もっと厳しかったですよ」と語っていたのがとても印象的でした。
 歌舞伎の跡取りの人生について考えてみると、誰もが皆、物心ついた頃から、自由意志など関係なしに稽古を強いられ、歌舞伎を叩き込まれるのですよね。その中で、最初は反発を覚えながらも、だんだんと大事なことに気づいていくのでしょう。無理矢理にでも歌舞伎の道を歩むうちに、「歌舞伎を信じる気持ち」があとから生じて人格の一部となっていくのですね。
 ここで私が思うのは仏教のこと。私自身も、小さなころから衣を着せられ、自分の意志とは無関係なところで、徐々に出遇ってきた気がします。最初から信じる気持ちがあって、というものではないのですね。

西方山 極楽寺

大阪府八尾市にある、真宗大谷派のお寺です。

0コメント

  • 1000 / 1000