本『サラバ!』(西加奈子 著)

 一人の男の30歳くらいまでの人生を通して、生きること、特に「信じること」というテーマを中心に社会と内面との葛藤、そして人としての成長を描き切る小説。文庫版にして上中下の3巻に渡る大長編です。
 特に重要な人物として、主人公の姉の存在が大きいと感じました。言葉遣いから服装から、とにかく「人と違うこと」を過剰に追求する姉は、母親や友達、主人公自身からも「異常者」のレッテルを貼られ、相手にされないようになっていきます。一方主人公は、適度に周囲との折り合いをつけるため、自らを主張せずに受動的な生き方をして、うまく世の中を渡っていきます。
 しかし、後半で二人の関係性に変化があり、姉の人生観の深さに驚かされる展開になります。楽しく切なく、小説の魅力が全部詰まったような作品です。

西方山 極楽寺

大阪府八尾市にある、真宗大谷派のお寺です。

0コメント

  • 1000 / 1000