うつむいて
うつむくことで
君は生へと一歩踏みだす
谷川俊太郎「うつむく青年」より
詩人の谷川俊太郎さんが11月13日に亡くなりました。この、ことば欄でも何度も取り上げさせていただき大好きな詩人でしたので、やはり寂しいです。
以前谷川さんのインタビューを見たことがあります。著名な哲学者を父に持ち、若くして創作が評価されて活躍した方なので、さぞかしたくさん学問し、人並外れた読書量を経て来たのかと勝手なイメージを持っていました。しかし実際には、とにかくみんなと一緒に何かするのが苦手で学校が嫌いで、おまけに本を読むことも全然してこなかった、と語っておられました。ただノートにいろいろと思い浮かんだ言葉を書き溜めているのが楽しくて、それを、これまで自分に一切の興味を示さなかった父親に見せると、「おもしろいもの書くじゃないか」と初めて認めてもらうという体験をし、それからずっと書き続けているのだということでした。おそれ多くも、なんだかかわいらしい方だなと思った記憶があります。
ずいぶんといろんな励ましをもらってきたような気がします。「のどがかわくということ」「遠くで犬が吠えるということ」、生きるということがほんとうに小さな、身近な物事のなかにあるのだと気づかせてくれました。そして、悲しいこと、空しさを覚えること、怒ること、そういうことも、楽しさやうれしさと同じ、生きることの中身なのだと語りかけてくれました。
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