本 『わたしたちが孤児だったころ』(カズオ・イシグロ 著)

 1900年台初頭の上海。貿易会社勤務の父と、優しく美しく、反アヘン運動に携わっていた母を、相次いだ謎の失踪により10歳で失い、故郷ロンドンに帰された少年が、両親の行方を突き止めるという目的のために探偵となり、実力と名声を得たのち上海に戻ってくる、というお話です。
 ストーリーよりは、非常に抑制され淡々とした筆致で進む文章そのものに触れている時間が心地よかったので、自分でも「どうしてこんなにこの本に惹かれるのだろう」と考えていました。
 そういえば僕は子供の頃、うらさびれた階段や駐車場の角の壁にもたれて「もしも自分が孤児だったら…」と妄想するのが好きだった事を思い出しました。すると最後の解説に「あなたは孤児になるために、この物語を読むんだよ」と書いてあり、納得でした😆

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