そのかごを
水につけよ
蓮如(『蓮如上人御一代記聞書』より)
蓮如上人のこの言葉は、ご門徒との対話で、
「わたしの心は、仏法を聴聞しているその座敷ではありがたい、尊いと思ったりもするけれども、まるで籠(かご)に水を入れた時のようにすぐに、もとの心に戻ってしまうのです」
と心中を打ち明けられたときに、その返答として発された言葉です。これは本当に、仏法を聴聞するということの本質を捉えた言葉だなと思うのです。
まず、一度聴いて「そうだなぁ」と頷いたりして、深い感銘を受けたつもりで家に帰っても、すぐにそのことを忘れてしまうのは、誰もが例外なくそういうものだ、ということが踏まえられています。日常生活の中で、いつの間にか仏法など干上がってカラカラになってしまう、それは当然のことなのでしょう。
僕自身も、仏法聴聞が疎かになる時期がこれまでにもたくさんありました。そんな時期は本当に、一体何が自分にとって大事なことなのかわからなくなる感覚があります。実際、これから先どれだけ聴聞を重ねたとしても、自分の中に仏法が浸み込んで「あとは聞く必要ない」という時は訪れないでしょう。
仏法の潤いがある人生を送りたいのであれば、少しも水を保っておけない自分自身という籠を、常に水に浸しておく以外に方法はないということを、これ以上ない的確なたとえで示して下さった言葉です。
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