夫婦というよりは「婚姻関係」をめぐる小説。どう違うのかと言われると難しいのですが、「夫婦」では理性的で落ち着いた感じがしますが、この小説で描かれているのは、あくまでもバランスの悪い、バラバラな人間同士が(半ば強引に)関係を保っている、そのどうしようもなさだと思うのです。各章ごとにさまざまな登場人物の視点が入れ替わっていて、その中で、不倫、暴力、親子関係の破綻、自殺願望と、もがき苦しむ人間模様が、時には強烈な性描写も交えて綴られています。
読みながら思ったのは、人が人を丸ごと受け入れたり、許したりすることは不可能なんだということ。だからこそ、私たちはその「少し極端な例」を物語で体験することにより、ままならなくて難しい(!!)人間関係を生きるための心を、養う必要があるのです。
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