4月 今月のことば

  幸福に至る道は無く、

「幸福な道」があるだけです。

   ティク・ナット・ハン『和解』より


 先日、妻と車で移動中、制服を着た高校生らしき女の子が急いで自転車を漕いでいるのを見かけ、その子が長女と同じくらいの年恰好だったため、
「ああいう子を見ると長女のことを考えちゃうよね」
という話をしました。すると妻が、ほんとにそうよね、と言ったあとで、
「この先十年くらい経ってあんな子を見たら、長女の制服姿を思い出して懐かしく寂しい気持ちになるんだろうなって考えると、今からもう寂しくなっちゃう」と言いました。とても複雑な話ですが、でもよくわかるなぁ、と妙に納得してしまいました。
 何気なく過ごしている現在も、遠く過ぎ去ってしまった未来から見れば、信じられないほどの宝物を手にしているはずなんですよね。
 人間は、常に何らかの苦しみを抱えているので、基本的には現在を「幸福だ」とは思えない性質をもっているようです。幸福は未だ訪れない未来に、あるいは過ぎ去ってしまった過去にしか無いものに思えます。しかし本当は幸福は「いまここで気づくもの」なのでしょう。気づくと言っても難しいことですが、そのための手がかりは示されてあります。何かを手に入れて幸せになるのではなく逆に、それが無ければ幸せになれないというこだわりを「捨てること」「手放すこと」だと。自己啓発本のタイトルみたいで癪ですが。

西方山 極楽寺

大阪府八尾市にある、真宗大谷派のお寺です。

0コメント

  • 1000 / 1000