3月 今月のことば

最も重要なことは
ものにだまされないで
人生を楽しむことができるということ

   鈴木俊隆

   『禅マインド ビギナーズ・マインド 2』より


 1969年7月20日。アポロ11号の月面着陸船が月に到着した日。その同じ日、まさに今着陸しようとしている時に、鈴木俊隆老師は講話をおこなっていました。老師はアメリカに禅が普及する基礎を築いた方です。その講話が実に爽やかで、その日の熱狂や興奮に動じることのない、仏教の真髄のようなお話なのです。上述の本に掲載されています。
 月に最初に降り立った人間は、自分の成し遂げたことを誇りに思うかもしれない、しかし、私は彼を偉大な英雄だとは思いません、と老師は語ります。われわれ人間は興味深いものを探してそこかしこをピョンピョン飛び回り、月やもっと遠くにまで行こうとしています。しかし本当に興味深いことを見つけようと思うのなら、あらゆる瞬間において自分の人生を楽しみ、今自分が持っているものをよく観察し、自分が置かれている環境の中で誠実に生きていけばいい、という老師の言葉には、人生を根本から肯定する強さと優しさが溢れています。
 普段は無意識に、近くよりは遠くに、今よりは過去や未来に、興味深いことを見出しがちではないでしょうか。しかし、本当は「今ここ」にしか自分の人生というものはないのだということを、老師のお話は思い出させてくれます。本当はどこにいても何をしていても、人生を完全に楽しむことはできるのだと。

西方山 極楽寺

大阪府八尾市にある、真宗大谷派のお寺です。

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