この本の著者は、宮城県栗原市の曹洞宗寺院住職で、私が現在学んでいる臨床宗教師という活動が始まった、その起点となる人物の一人です。
地震が起き、著者は自然の力にただ圧倒され、そのあまりの惨状に、これまで培った宗教的言語がまったく通じない、信念が一度崩壊するような経験をしました。そこから再び立ち上がり、「人々が語ることを聴く」という活動を始めます。この本はその活動の記録であり、語ることにより、人が少しずつ内に秘めた生きる力を取り戻していくという実例集になっています。
時に詩的に卓越した文章で、時に壮大な宇宙的視点から言葉が紡がれていて、読み物としても本当に面白いです。苦悩の海岸こそ、宗教が生きてはたらく場所なのだと感じられました。
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