11月 今月のことば

何も見ないよりは
何かを見ることを
選んだのです
村上春樹(エルサレム賞受賞スピーチより)


 10月は、パレスチナ、ガザ地区での悲惨な空爆による被害の様相を、スマートフォンで毎日見つめていました。大手メディアのニュースチャンネルだけではなく、今は個人的にソーシャルメディア上で発信している方を追いかけた方が、より細やかで生々しい情報を得られます。以前からフォローしていたパレスチナについて発信し続けている方(高橋美香さんという写真家さんです)は、中東のメディアやジャーナリストのもとに集まった、個人的な動画(それだけにあまりにも壮絶です)を粛々と公開し続けています。それを安全な屋根の下で、満たされたお腹を抱えて眺めている自分自身のおぞましさに、時々ゾッとします。
 今回の戦争は桁違いの規模ですが、2008年の暮れから翌年の1月にかけても、イスラエルによるガザ地区空爆と、それに続く地上侵攻、応じるハマスの攻撃がありました。そしてちょうど同じ時期、「エルサレム賞」という世界的な文学賞の受賞が決定した村上春樹さんは、そういった状況から、受賞を断るかどうか、非常にためらったそうです。結果として彼は受賞し、イスラエル政府要人の列席する授賞式に出席してスピーチすることを選んだので、私たちは今、ネット上でそのスピーチを読むことができます。有名な「壁と卵」のたとえだけでなく、隅から隅まで、今私たちが触れるべき言葉で溢れています。ぜひご一読を。

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